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第7回 『システムエンジニアにとってサービスとは』

2014.1.20

鈴木君は、朝からクレーム対応で大忙し。
山田君は、一昨日から仕様変更で大忙し。
田中君は、お客様の検収で不合格となり、朝から対応会議で大忙し。
システムエンジニアは、このような緊急で重要なイレギュラー作業に多くの時間やコストを割いているものです。

考えてみれば、システムエンジニアがクレームを受けたり、仕様変更が発生したり、検収で不合格になるのは、顧客から
「私は不満足だから、満足させてくれ」
と言われているのと同じことです。
システムエンジニアはサービス業ではないけれども、「満足」や「サービス」について考える必要がありそうです。
いや、今はシステムエンジニアもサービス業とも言えます。

産業構造のサービス化の進展で、IT業界でもソフトウエアパッケージやハードウエアよりもサービスの売上比率が上回ってきています。IT業界での「サービス売上」とは、コンサルティングや保守保全エンジニアリング(CE業務)が主ですが、顧客の求めるサービスは単にそれだけではありません。
顧客は、全てのシステムエンジニアにコンサルティング能力やサービス能力を望んでいます。顧客は、従来は付加価値的と思われていた「サービス」をエンジニアにも当然のように求めているのです。

ですから、システムエンジニアが自分達の業務を、サービスという側面で見直してみることが大切です。

一般的にサービスには、次の3種類があります。
1)無料・値引きサービス
2)機能的サービス
3)心理的サービス
この3つのサービスを、システムエンジニアの業務に当てはめてみましょう。

「無料・値引きサービス」とは、多くの人が真っ先に考えるサービス活動です。
「ランチにはコーヒーがサービスで付きます」とか、「この作業は無料でサービスさせていただきます」などのコストがかかるサービスです。
日本で考えられるサービスとは、このように無料・値引きという意味で使われることが多いのです。
しかし、このサービスは基本的にコストがかかるため、会社やプロジェクトが組織的/戦略的に考えるべきことです。

「機能的サービス」とは、本来のエンジニアリング活動や、成果物の機能や品質の提供です。
例えば保守サービスには、スピードと正確さが要求されます。システム開発なら、モジュール間インターフェースの正確さや、システムが正常(仕様通り)に動作することが要求されます。
この機能的サービスは、本来のエンジニアリング業務ですが、相手が満足するか不満足なのかという観点で、システムエンジニア一人ひとりのコア・サービス能力が問われているとも言えます。

「心理的サービス」とは、相手の個人的な気持ちに応えることです。
例えば、ハンバーガーショップの店員が笑顔で接客するようなシステムエンジニアの”態度”や”気配り”であったり、お客様のニーズや期待に応える”共感”や”配慮”です。機能的サービスより、ずっと付加価値的なものです。
例えば、「システムエンジニアの鈴木君は、会議での態度が悪い!」とか、「エンジニアの山田君はちゃんと私の要求を聴こうとしない!」とか、「田中君は、僕らのこと考えているとは思えない!」というクレームや、(クレームにはしないけれども)相手のそういう気持ちは心理的サービスの範疇です。

これまで、3つのサービスについて説明しました。
機能的サービスと心理的サービスで顧客が満足すれば、無料・値引きサービスの必要性はかなり少なくなります。
さらに以下の事例のように、システムエンジニアの心理的サービスが充実すれば、クレームや仕様変更などが減少して、機能的サービスの質が向上するのです。

例えば、クレームや仕様変更の原因のひとつは、システムエンジニアだけでなく顧客自身も気づかなかった顧客ニーズが、仕様書をフリーズした時点でなお、仕様書の外に存在することです。
この原因は、エンジニア側の心理的サービスの不十分さであることが実に多い。
つまり顧客やプロジェクトメンバーへの心理的サービスが不十分なために、顧客やメンバーの積極的な仕様作成等への参加を阻害してしまい、打合せやデザインレビューが不完全に終了してしまうことが原因になるのです。

こんな事例もあります。
私がエンジニアだった頃、仲間内で「クレームがないのは、システムが使われていない証拠かもね」などと言っていました。
心理的サービスの視点では、全くクレームがないとか、全く仕様変更がないことは、システムエンジニアにとって注意のサインなのです。
なぜなら、顧客がシステムを使っていなければ、クレームや仕様変更は発生しません。
そして、システムが使われていないとしたら、顧客は諦めているか、全く満足していない可能性が高い。この結果、リピート依頼がなくなったり、顧客が無料・値引きサービスや無理難題ばかりを要求してくるようになるかもしれません。

システムエンジニアとって「心理的サービス」は、大切な能力だとおわかりいただけたでしょうか。
次回のコラムは、顧客やプロジェクトメンバーに心理的に満足してもらえる心理的サービスのスキルやマインドについてご紹介する予定です。

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