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第15回 『モチベーションのリーダーシップ』

【私が本当に体験したケース1】

「今すぐ、顔洗って来い!」
会議中、突然のマネージャーの大きな罵声。

その声の先には、目を見開いて背筋を伸ばし、身をこわばらせた入社2年目で正式配属されたばかりの若手社員。会議中に少しウトウトしていたのでしょうが、この瞬間120%目が覚めました。
「聞こえないのか!早く顔洗って来い!」
明確に目が覚めたであろうその若手社員は、どうして良いのかわからず、おどおどしています。

(本当に洗面所に顔を洗いに行けと、マネージャーは言っているのだろうか。ここで席を立つと、「バカ!目を覚ませということだ!会議中席を立つな」と再度怒られるのではないだろうか…どうすれば、どうすれば、どうすればいいのだろう…) 若手社員は既に自分自身で決断する能力を失っているようでした。

「こら!お前!日本語が分からんのか!顔を洗って来いと言っただろうが!」

彼は急いで顔を洗いに部屋を出ました。
しかしマネージャーが怒鳴った瞬間から、会議は一気に暗くなってしまいました。”仕事上の良い緊張感”ではなく、”対人関係の高い緊張感”で満たされてしまいました。つまりイヤ~な雰囲気で会議室は満たされてしまったのです。

私はこのまま会議を続けたいとは思えませんでした。会議のメンバーも同じ気持ちらしく、みんな押し黙っていました。(なにもそこまで怒らなくてもいいんじゃない?嫌な雰囲気になっちまった…。もう会議終りません?彼に対する罵声も日常茶飯事だし、彼もすっかり心身ともに参ってしまっているみたいだなぁ)

怒られた若手社員は、配属当初マジメで一生懸命仕事をする人でした。しかし毎日怒鳴られ、萎縮しながら仕事をしていたので、仕事の生産性や品質の低下が見えてきていました。毎日を恐る恐る生きているように見えました。

「もっと自信を持って発言できないのか!」「もっと元気に挨拶できないのか!」「もっとしっかり仕事しろ!」

毎日マネージャーの叱責を浴びているうちに、彼のパワーもエネルギーも感じられなくなっていました。だからますますマネージャーに怒られる。
ミスをしてはいけないという気持ちがありすぎて、結果的に小さなミスをしてしまう。だからますます怒られる。
若い彼は、”できない人材”に落ちていくサイクルにハマりこんでしまったようでした。

「お前はいつもそうだ!」「学校で何を勉強してきたんだ!」「会社に来る資格はない!」「やる気ないのか!もういい!帰れ!」「暗いんだよ!」

だんだんと部下の行動に対するフィードバックや支援ではなく、感情による人格攻撃になっていくようでした。
マネージャーは部下を育成しているつもりだったのかもしれません。必死で彼の将来を考えて叱っていたのかもしれません。若い彼に非がなかったとはいえません。ミスがあったのも事実ですし、タフさも必要でしょう。
しかし結果的に、このマネージャーは”無気力の育成”をしてしまいました。叱られれば叱られるほど、モチベーション・アップする社員もたしかにいます。でも、この若手社員に対するマネージャーの叱り方に問題はなかったでしょうか?

また、毎日のように罵声を聞かされ、他の社員のモチベーションも低下していきました。早く帰りたい、この場から去りたいと思う社員たち。周り(組織)の雰囲気を壊す、職場風土を暗くするマネージャーの言動は如何なものでしょう。管理者の言動は職場風土に大きな影響を与えるのです。マネージャーの罵声は、モチベーションを大きく下げてしまい、結果的に組織パフォーマンスを下げてしまったようです。

マネージャーは部下を育成することもできますが、簡単に部下を潰すこともできる。その責任感が重要です。



【こうあって欲しかったなぁというケース2】

「今すぐ、顔洗って来い!」
会議中、突然のマネージャーの大きな罵声。

その声の先には、目を見開いて背筋を伸ばし、身をこわばらせた入社2年目で正式配属されたばかりの若手社員。会議中に少しウトウトしていたのでしょうが、この瞬間120%目が覚めました。
「目が覚めたか?」
「はい。申し訳ありません。」
「まぁ、疲れてるのもわかるが、この会議は重要な会議だから、ちゃんと聞いててくれよ!」
「はい」

「君もこのプロジェクトの重要な一員なんだ。しっかり会議に参加してくれよな。君のような若い人間の意見も本当にこのプロジェクトには必要なんだよ!」

「皆さん、大きな声を出してすみません。彼にもしっかり参加してもらいたいので、ちょっと大きな声を出してしまいました。それでは会議を続けます。」

会議に参加している他の人も思いました。 (マネージャーの気持ちはよく分かる。新人君に対する期待が大きいんだよな。やっぱり叱るというのは大切だな。どうでもいい部下にあんなふうに”真剣”に叱ることはないもんな。さて会議がんばろう。彼も上司の気持ちが少しは分かったんじゃないかな。)

マネージャーが怒鳴った瞬間、会議は一瞬暗くなりましたが、マネージャーの新人に対する気持ちが理解できたので、”仕事上の良い緊張感”は維持され、さらに会議のモチベーションが高まったのです。つまり”ヤルゾ!”という良い雰囲気で会議室は満たされたのです。

叱られた若手社員は、配属当初からマジメで一生懸命仕事をする人でした。しかし毎日慣れない仕事で心身共に疲れていました。すこし遠慮して仕事をしていたので、仕事の生産性や品質の低下が見えてきていました。毎日を恐る恐る生きているように見えました。そこでマネージャーは、部下の存在意義を示して、彼に活力を与えようとしたのです。

「もっと失敗を恐れずに自信を持って発言しろ!」「分からないことがあれば、いつでも聞きに来い!」

毎日マネージャーの言葉を聞いているうちに、彼のパワーもエネルギーも大きくなってきました。これが本当のエンパワーメントです。そして叱られる頻度が少なくなり、自分自身の自信も言動に表れてくる。若い彼は、”主体性ある人材”に成長していくサイクルにちゃんと入っていきました。

叱るという行為は、上司の感情で反応するのではなく、最終的なお客さまのことを考え、部下の育成を考えた上で行なうべきです。叱る前提として、上司は社員の存在意義や組織の存在意義を、目的や目標でしっかりと示す必要があります。目的や目標がしっかりしているからこそ、客観的な叱責や支援ができるのです。上司の目的意識/CS意識/ES意識をしっかりと組織人材に浸透させることは、部下や組織人材のパフォーマンスを大きく向上させます。

管理者の言動は職場風土に70%以上の影響を与えるといわれます。もちろん管理者の言動とは無関係にモチベーションアップする社員もいますが、管理者の言動は部下や最終的には組織の生産性やCSに影響を与えます。変化の激しい現在、部下育成はとても重要なマネージャーの職務なのです。

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